桑原:
これも丸紅時代なのですが、会社全体で組織改編がありまして、それまで丸紅は本部制で20本部ありましたが、それが部門制になりまして、組織がもう少し大くくりになりました。私は自動車部で輸出や海外での事業経営が主な仕事でしたが、それが国内専門の産業機械と一緒になって、輸送・開発機械部門となりました。当時、商社は今以上に縦社会だったので他部署のことはまったく知らなかった。互いのことを知り合わないと組織として力が発揮できないね、ということで、徹底的に話し合うことになったのです。その際に、自分が入社2,3年の若手だった頃、役員や常務なんかに「桑原君」って呼ばれたとき、名前を覚えてもらっているということがすごく嬉しかった記憶がありましたので、自分もこの部門の人達の名前を徹底的に覚えてやろうと思いました。部門には三百数十名いましたので、覚える為には会話をしないとなかなか覚えられない。やっぱりコミュニケーションだと思いまして、「敬人通意」という四字熟語を作りました。意味は、「人間は一対一、平等なのだから、お互いを敬いあって、自分の意見を通じ合わせましょう」っていうことです。
財部:
とても良い言葉だと思います。多くの日本企業が新興国市場でうまく行っていませんが、欠落しているのはまさにその点で、やはり上から目線で差別意識を持ちながら接している訳です。そういう気持ちは相手に伝わりますから、当然リスペクトさせません。札束で顔を引っぱたいて働けとやっているから、裏帳簿を作られて、品物も横流しされてしまうんです。この人の為にちゃんと働こうと思えなければ、目先の利益に走った方が得ですからね。本当に一対一の人として敬い合うかということですよね。日本企業はそれで新興国市場で失敗しているというのが僕の認識です。
桑原:
ですから、先ほどお話したアメリカ駐在時にも、四字熟語のようにワンフレーズは言えないのですが、説明をしながら「オープンコミュニケーションでやっていきましょう」と。コミュニケーションの程度は人それぞれですが、こちらの思いは理解してもらったのかなと思います。ダイエーでもそのつもりでやっていて、社員に向けてコラムを書いたりしています。自分の失敗談とか、仕事とは関係ない話を意識的に書いていますね。
財部:
最後にですね、天国に行ったら・・・の質問、これはキラークエスチョンでして、どうお答えになるかはご自由なのですが、僕らは結構楽しみにしているんですけど。「Welcome! are you ready to go?」というのはどういうことですか。
桑原:
これは、天国に行けるかどうかは別にしまして、仮に天国に行けたとすると、まずは、天国によくぞ来てくれたねと温かく迎えてもらってね、「だけど桑原さん、本当に準備はできているの?」と、「現実の世界で全部やりたいことやって、こちらにきたの?」と。そういう準備が「are you ready?」ということで、そのあとの「to go」ですね、「are you ready to go?」の中身はですね、これから考えたいなと思うわけですけど、たぶん「to go with me」って聞かれるのがいいのではないかな、って思いますね。
財部:
今日はどうも、長時間ありがとうございました。