中国・成都の郊外。ロードサイドの地域密着型食堂。辛いものは苦手ではない。いや、どちらかというと好きだ。日本でも四川料理は食べている。うん、問題ないはずだと取材先での接待を笑顔でうける。しかし、ここの料理を口にした瞬間、今まで食べていた四川料理がまったくのニセモノであったことがわかった。おなかはすいている。しかし、箸をすすめることができない。白米はない、スープも本気の四川テイストだ。逃げ場はどこにもなく、くちびるはすでに感覚を失っている。中国人はそんなひ弱な日本人を楽しそうに見ている。ジャーナリストは取材が命。自分の足をつかって、自分の目で見て耳で聞いて、自分の頭で思考して、世の中に役に立つ、半歩先の情報を常に提供するのだ、と師匠に厳しく教えられている。しかし、時には舌や胃腸にも試練を与える場面があることを知った。今後は抜かりなく心身を鍛えたいと感じた成都の取材だった。(内田 裕子)