「それが悪趣味であろうと」

ドバイ。 「世界一のものしかいらない」という首長の意志(意地)を着実に実現している街。 とにかく発想が常軌を逸している。 全てのコンドミニアムにプライベートビーチを付けた人工島「パームアイランド」。 窓から海中の眺めを楽しもうと建設中の海底ホテル「ハイドロポリス」。 勝手に7つ星というグレードをつくった最高級ホテル「ブルジュ・アル・アラブ」。 空港も、港も「世界最大」のものを建設中。 究極はこの高さ818メートルの「ブルジュドバイ」。 世界最高の高さを維持するため完成時の高さは公表されていない。 どこまで背伸びをしていくことができるのか。 そんなものだらけのドバイの街はすべてが嘘っぽくて楽しい。 ニーズに合わせて何かをつくるのではなく、 世界一をつくれば、世界一になれるのだという発想。 面白さと危うさが同居するドバイ。 どこを探してもこんな街は存在しない。良くも悪くも。 そんな冷めた目線も、この街を上空から見下ろした瞬間に消え失せた。 見渡す限りの砂漠。 ここは間違いなく砂漠だったのだ。 砂だけしかない、なんとも心細い寂しいこんな土地に、 世界一の超近代都市を造ろうと決めたのだ。 その凄まじい意志やら思いやらが、ヘリからドバイを一望した瞬間に理解できた。 「なんだか人間って凄い」。 空の上でどうしようもなく心を揺さぶられた。 ドバイという街に敬意を表さずにはいられない。 それがいくらオイル成金の必ずしも趣味が良いとはいえない夢であろうと。(内田 裕子)