「Already Dead」

2006年3月、デトロイト。 自動車産業の中心地、デトロイト。冷え切った空気。うわさには聞いていたが、アメリカ内陸部の冬の寒さがここまで厳しいとは思わなかった。 「暗い街」そんな印象だった。 「おまえはもう死んでいる」という昔のアニメで流行ったフレーズがあったが、到着した瞬間、そう感じた。「この街はもう死んでいる」。 街のどこを切り取ってもまったく生気というものを感じなかった。 夏に来たら多少違っていたかもしれない。経済発展著しいBRICsを取材している最中の訪問だったから、余計にそう感じたのかもしれない。 しかし、自動車メーカーを取材しながら思った。 「ここから新しいことがはじまるとはとても思えない」。 この日の朝、地元の新聞に掲載されていた自動車人気ランキング。 すべての分野の1位を日本メーカーが占めていた。 そんな風景の中のGMタワー。 その豪華さは古い建物ばかりのデトロイトの街で一際目立っていた。 ガラス張りの建物はたしかに美しい。しかしなんだろうか、この違和感。 デザイン、色、高さ、すべてが不自然だった。 なんだか無理があるな、と。 経済は街の風景に現れる。注意深く眺めていると、そのシグナルを発見することができる。 それを見つけるのは取材時の楽しみのひとつである。(内田 裕子)