「変わるインド、変わりようもないインド」

2006年1月。 インド・ハリアナ州マネサール。ニューデリーから約45キロ南西。 インドでのビジネスを成功させている数少ない日本企業、スズキを取材した。 生産規模を拡大するため、巨大な工場を建設している最中だった。 最新鋭の設備を持つ自動車工場が生まれようとしているその敷地のすぐ隣には、インドそのものの生活がぴたりと張り付いていた。 撮影中、近くの野原で草を食べ、帰路に着く牛の群れに出会った。 インドの牛はやせている。真っ黒な目の中に宿っているあの静けさは悟りか諦めか? 何度となく通ったいつもの道に、なにやらすごいものができはじめている。 牛は何かを感じているのかもしれないが、無関心を装って歩き続ける。 草を食べて寝るいがいに何ができるのか、といわんばかりに。 変わるインド、変わりようもないインドがそこにあった。(内田 裕子)