株式会社リヴァンプ 玉塚 元一 氏
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財部:
ええ。

玉塚:
その問題をこうしていけば、このように解決できるという、事業計画を作るフェーズが非常に重要で、僕らはそれを「フェーズ1」と呼んでいます。その中にはたとえば、「不採算事業は○月△日までに撤退しなければならない」、「不採算店舗はこのようにして立て直さなければならない」、「現在のガバナンス体制では意思決定のプロセスが不明確だから、もっとシンプルにして、取締役会をこのようにしたほうがいい」といったようなコンポーネントがあります。

財部:
なるほど。

玉塚:
そこまで落とし込んで具体的な事業計画を作り、オーナーと向き合い、「こうすれば絶対にいい会社になる。ですから、ガバナンスも双方が同じ方向性で握り、たとえ過去のしがらみがあっても、その膿を出し切り、新経営体制で一気にここまでやりましょう」という意思統一を、会社対会社で図って突入≠キるから、改革のスピードが違ってくるんですね。

財部:
そのやり方だと、一方的な押し付けにならないですね。

玉塚:
そうなんです。僕たちが心掛けているのは、現場の人たちと同じ目線になり、「僕らはリヴァンプの社員」とか「あなたはこちら側の人、あちら側の人」という意識をなくすこと。そのうえで、改革チームにキラリと光るプロパー社員たちを巻き込み、一気に改革していくんです。これを何社もやっていくうちに、企業再生のノウハウが積み上がってきたわけです。

財部:
僕は、そうした取り組みは素晴らしいと思っているんですが、1つ危惧しているのは、リヴァンプ自身の収益モデル。その辺は、もうみえてきているんでしょうか。

玉塚:
それには3つありまして、1つはデュー・デリジェンス(M&Aや投資活動を行う価値があるかどうかを判断するため、対象会社の財務内容や事業内容の実態を調査すること)。当社では、再生計画作成業務を、プロフェッショナルベースで料金を頂いたうえで、デュー・デリジェンスも含めてしっかりやるんです。だいたいは内製ですが、場合によっては、僕たちの周りにいる独立系コンサルタントや業界のスペシャリストを入れることもあります。これが当社の1つ目のレベニュー(収入)で、結構、お客様の方からご依頼をいただいて行っていますね。

財部:
はい。

玉塚:
もう1つはロッテリア、トークツ・グループなどで行っているタイプで、常勤・非常勤のスタッフが通常2〜5人でチームを組んで現場に入り、マネージメントフィーという形で料金をいただいています。コストプラスアルファ程度の感覚ですが、コンパクトにやっていますから、小規模のオフィスを回していくには十分です。

財部:
そうですか。

玉塚:
そして3つ目がエクイティ。たとえば早い段階で対象先の企業が利益を出せるようになれば、配当益が出たり、あるいは中長期的には、エグジットという形で他社に売却した方が、中長期的にはその会社のためにも健全だということもあり得ます。あるいはIPOであるとか――。

財部:
単純にIPOという考えではないんですね。

玉塚:
そうです、1つの選択肢です。でも配当だけでも馬鹿になりません。気合を入れてやっていたら、税引き後、それなりに利益が出てきたということも結構ありますから。

財部:
ほお。

玉塚:
もともと僕も澤田も、大儲けしようとは考えていないですからね。皆で健全にでやって、結果的に大きな利益が出たら、みんなでそれを分かち合おう。もしくはそれを使ってプリンシパルインベストメントをやっていこう、という考え方でやってきて、創業以来2期とも黒字決算をしてきたんです。

財部:
それは立派ですね。会社の立ち上がりから黒字決算はなかなかできるものではありません。そもそも僕は、リヴァンプさんの話を聞いたとき、面白いビジネスモデルだし、それで収益がついてきたら素晴らしいと思っていたんです。

玉塚:
そうなんですか。

財部:
というのも、僕は外資系の再生ビジネスに対して、日本には日本なりのやり方があっていいはずだと思っているんです。ところが日本企業の方にも問題があって、僕からみると、大企業がコンサルを使う理由のほとんどが、中間管理職がトップマネジメントの連中に「いや、ボストンがこういっています」「マッッキンゼーはこう話しています」という、「免罪符」を取るためなんです。また、一方で、コンサルタントがサラリーマンの立場で他人の会社をコンサルするのと、自分でほんとうに会社経営するのは、全く違いますよね。その意味で、まさに経営というものを知っている玉塚さんたちが、日本流の新しいコンサルティングモデルを作っていく、ということが素晴らしいと思うんです。

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玉塚:
僕たちは結局、事業をやっているんですよね。

財部:
そうですね。よくあるファンド、とは明らかに違いますね。

玉塚:
でも、その事業にそこそこのエクイティを持たさせていただいている。事業をやっていけば会社がよくなり、皆も生き生きしていくわけですし、もしかしたら近い将来、このうちのどれかかがコア事業になり、出発はリヴァンプという会社ではあったにせよ、じつは将来、気がついてみたら、なにかの事業に経営を特化しているかもしれない。いずれにしても、僕たちの最初の切り口は経営だったというわけです。

財部:
経営そのものに面白みを見出していて、エクイティを持つことがメインの目的ではない。

玉塚:
そうです。実際、当社には「経営をやりたい」「経営者として育ちたい」という人材ばかりが集まってきました。ところが社内には、じつはいくつか事業部隊があり、そこでコンスタントに収益を上げて、プリンシパル投資もしながら、さらに若い人たちが集まってきたわけです。

財部:
そうですか。

玉塚:
さっきの「経営者として育ちたい」という話もそうですが、サラリーマン的に考えてみても、自分自身がほんとうに深く顧客と市場を考え、何をしなければいけないかに知恵を絞るとか、チーム全員のベクトルを同じ方向に向け、いかに具体的な計画を1ミリ、2ミリと進めていくのか、ということをやらない限り、経営というものは身につきません。

財部:
経営は理屈はありませんからね。

玉塚:
これは完全に、アントレプレナーの発想ですよね。そういう精神で、もっと新しいものを創り上げようとする動きが、日本にもっともっと渦のように起こってこなければ、非常にもったいない。

財部:
日本の景気はとっくに回復しましたが、そういう真の意味での「アントレプレナー精神」というものが、まったくこの国には根付いていないですよね。

玉塚:
そうですね。大企業の中にいて、そんなものはどうでもよくなっているのではないでしょうか。しかし「それがほんとうにお客様の価値になるのか」、「その方向性でほんとうに正しいのか」ということを喧々諤々に、殴りあわんばかりに議論して、一度決めたらそこに突入≠キるような、本気の経営ができるようにならなければだめです。

財部:
それにしても玉塚さんは、ほんとうに楽しそうにビジネスをやっているという感じがしますね。

玉塚:
そうですか?

財部:
もちろん大変だとは思いますが、経営とは本来、新しい価値をどれだけ創り出していくか、ということですよね。そこで僕がお聞きしたいのは、いまの玉塚さんのこうした行動や考え方がご自身の中で形成されたのは、いつ頃だと思われますか?

玉塚:
祖父が事業をやっていたということもあるのでしょうが、わりと若い頃から、経営や商売に興味はありました。僕は旭硝子に入社した4年目、27歳のときに「これからはグローバルビジネスだ」と思い、英語が喋れなかったんですが、会社に「海外に行かせてくれ」とお願いしたんです。そうしたら、ユニークな上司が「お前本気か」といって、シンガポールに行かせてくれたんですよ。

財部:
そうなんですか。

玉塚:
当時、僕は化学品チームのヘッドとして、年商10億円ぐらいの部隊を率いていました。それは1989年、プラザ合意の4年後のことで、キヤノンや東芝を始め、東南アジアにどんどん工場が移転していた頃です。僕は当時、そこにプラスチック原料や化学洗浄などの原液、溶剤を売り込みました。また物流拠点、あるいは大きな物件になると製造拠点も造ったりして、4年間やらせていただいたんです。その頃の時代背景もあり、僕がこの部署を出て行く頃には、10億円の売上が100億になり、部下も10数人にまで増えました。それで商売や経営はとても面白い、と思ったんです。この体験は、僕にとってもの凄く大きかったですね。

財部:
なるほど。

玉塚:
ところが僕はその頃、バランスシートが読めなかったし、「基礎体力」が足りないと思っていたんです。それで会社に米国への就学制度があると聞き、「よーし、一丁アメリカに行って、勉強してきてやろう」という具合で応募したら、受かりましてね(笑)。

財部:
ははは。

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玉塚:
僕はじつは、MBAなんかどうでもよかったんです。純粋に、仕事で知らなくて悔しい思いをしたことを、学びたかったんです。だから、ある授業でジュリアさんという教授が「アカウンティング・ワン・オー・ワン」という講義に出てきてバランスシートを書いて、「左側が資産でね、右側が負債ね」と話したら、もう、涙が止まらなくなって(笑)。まさに「自分はこれをやりたかったんだ」という感じだったんですよ。

財部:
授業中に?

玉塚:
ええ、もう、超興奮状態でね(笑)。それで、MBA課程では普通、一年半で50単位ぐらいを取るんですが、僕は2年間で2つの学校に通い、96単位を取ったんです。

財部:
それは凄いですね。

玉塚:
でも、アメリカで他の国の学生たちと渡り合っていると、日本人の特殊性のようなものがみえてくるじゃないですか。とくに資本市場の構造や株式持合い、という慣習について。「アメリカ式対日本式」という次元でもなく、「いい悪い」でもなく、単純に「おかしい」という意味で――。

財部:
そうですね。

玉塚:
たとえば社長は会社のリーダーとして、自ら戦略を建て、それを実行するという経営責任を負っています。ところが多くの日本企業で、その社長というポジションが、最終的な「ご褒美」になっているのは、どう考えてもおかしいじゃないですか。アメリカでそういうことがわかってきて、これから経済活動がグローバル化され、「国境」がなくなってくれば、日本株式会社が「ガラガラポン」になる。そこで重要になるのが経営者だと、僕は思ったんです。

財部:
そうなんですか。