「経済産業省は3月1日の有識者会議で、脱炭素社 会の実現に向けた再生可能エネルギー導入拡大で生 じる国民の年間負担額が、2030年度に最大4・9兆円 になるとの試算を示した。平均的な家庭の電気代が 単純計算では年数千円上乗せされる。出席者から は、電気代の上昇につながることへの懸念の声が出 た」
これは読売新聞の記事の抜粋です。この記事に対 して国際環境経済研究所理事の竹内純子さんは「こ の試算を『変化を先延ばししたい人たちの印象操作 の試算』、『情報操作』というのは、それこそ昔、 原子力は安全だ、低コストだといっていた人たちと 何も変わらない」とFacebookに記しています。じつ に貴重な指摘をしています。 「私が『原子力ムラと再エネムラはとても似てい る』と思うのは、自分が推す技術の弱点にちゃんと 向き合わないところ。ムラという言葉は好きではな いですが、技術に実際に関わっている人たちではな く、周りでいろいろ言う方たちがちゃんと弱点と向き合わないムラ化しちゃうのは常々感じているとこ ろです。現状、再エネ発電賦課金が急速に膨れ上が り、一般家庭でも電気代の10数%、産業用では業種 業態によって異なりますが20%程度を負担してお り、国民全体では2.4兆円負担しています。今年1年 でこの金額、累積では50兆をはるかに超えるという 試算も出ています。(中略)再エネの意義を謳うだ けでなく、低コスト化や利便性向上に取り組んでい る事業者さんがちゃんと評価され、成長してほしい。やみくもな応援は玉石混交の再エネ産業をつく るだけです」
竹内さんは東電出身ですが、いまや当代きっての エネルギー政策の論客となりました。今月の「タカ ラベnews&talk」にもゲストとして登場いただきます。
コメントの中の「再エネ発電賦課金」に見覚えはないでしょうか。電力会社からの請求明細に明記されています。つまり皆さんが使用した電気代にプラスされた賦課金です。正確には「再生可能エネルギー発電促進賦課金」となります。太陽光や風力など再生可能エネルギーによって発電された電気は国が定めた単価により電力会社が購入することになっていますが、その費用は電気を利用するすべての人々が電力料金にしたがって負担しているのです。
読売の記事はこの賦課金が値上がりを続け、2030 年には年間で数千円単位で上乗せされる懸念がある ことを指摘しているのです。
そして竹内さんも急激に膨れ上がっている賦課金 が電気料金にしめる割合がすでに、個人では10%程 度、産業用では20%程度にも達している現実を直視 しなければいけないと言っているわけです。
昨年12月から今年の1月にかけて中国がLNG(液化 天然ガス)を買い占めた結果、価格が異常に高騰 し、LNGの調達ができなくなり、電力の需給がひっぱくしまた。報道ベースでは電気の供給量に対し 需要が99%という異常事態が続いたのです。電力会 社9社は互いに電力を融通しあってブラックアウトの危機を乗り切ましたが、その深刻さはあまり国民 には伝わっていません。今週、私は電気事業連合会 に取材したのですが、関西電力は供給が需要にまっ たく追いつけなくなり、12月15日から1月16日まで ほぼ全日、他の電力会社から電気を融通してもらっ てギリギリ停電を回避したというのが実情だったのです。
- マスコミは大きな災害時ばかり「停電が起こっ た」と騒ぎ出しますが、関西電力管内ではひとつ間 違えれば本当にブラックアウトが起こったかもしれ ないのです。2050年カーボンニュートラルを本気で 達成したいのなら、再エネのコストや電気の安定供 給などさまざまな課題に対してもしっかりと向き合 っていかなければなりません。3.11から10年。あの 悲劇を繰り返さないためにも、エネルギー問題に私 自身も再び高い関心を持って取材をしていこうと考えています。