検察は絶対正義ではない。
組織のメンツを守るために違法な捜査も繰り返してきた。事件になんの関与もしていなかった村木厚子さん(当時厚労省局長)を不当逮捕し、事件をでっち上げた大阪地検特捜部長自身が逮捕される大失態まで起こしている。
検察は絶対正義ではない。
しかし政治家の不正を忖度なしに追及できる唯一の存在だ。
検察幹部を政府の裁量で定年延長させる法案は「与党の政治家の不正追及をさせないため以外には考えられない」と堀田力さんは言う。
若い人は知らないだろうが、東京地検特捜部検事としてロッキード事件を捜査した人物だ。
「巨悪は眠らせない」と、当時の田中角栄首相を逮捕した立役者である。その堀田さんが、定年延長問題に鮮やかな決着策を示した。
「不当な定年延長を受け入れた黒川君の責任は大きいし、それを認めた稲田伸夫・現総長も検察への国民の信頼を損なった責任がある。2人とは親しいですが、それでも言わざるを得ない。自ら辞職すべきです。そして、仮に改正法が成立しても『政府から定年延長を持ちかけられても今後、検察はそれを受けない』くらいの宣言をする。それによって検察の原点である公正中立を守り、国民の信頼を回復するのに貢献してほしいと願います」
検察の公正中立に対する国民の信頼は揺らぎ続けている。検察みずから信頼を回復するまたとないチャンスである。責任をとらない行政官の常識を覆す心意気を検察自身が見せてもらいたい。