TAKARABE
JOURNAL本質を捉える視点

危険な惑星直列

日本にとって最大の地政学的リスクは日本海をはさんで向き合うロシア、中国、北朝鮮の三国が一体となって敵対することだ。安倍政権の中枢にいた人物はこの最悪の事態を「惑星直列」と呼んだ。ロシアのウクライナ侵攻が始まった直後、プーチンと会談を重ねてきた安倍元首相は、随分と批判されたものだ。しかしその意図が、単に北方領土返還だけではなく、「惑星直列」の回避だったことはあまり知られていない。
古今東西、外交は権謀術数の限りをつくした果ての妥協である。間違っても「民主主義」だの「力による現状変更は許さない」といったきれいごとだけで完結する世界ではない。それは大義名分ではあっても、国家と国家が激しくぶつかりあう水面下の外交戦では何の役にも立たない。西欧の国々はウクライナ支援で米国と足並みを揃えているように見えるが、各国のトップはみなプーチンとのホットラインを維持している。
米国追従オンリーでプーチンとの交渉チャネルを失った岸田首相は、ただの外交イベント好きとしか言いようがない。北朝鮮の軍事パレードに中国とロシアの代表団が顔を揃えた事態はまさしく「惑星直列」である。