「餅屋の“バカ息子”が突然ビール作りを始めて、売りに行っても誰も相手にしてくれませんよね」
伊勢神宮にほど近い老舗餅店の御曹司、鈴木成宗さんは祖業とは無縁のクラフトビール業界に飛び込んだ当時をこう振り返った。隣近所にも相手にされなかったが、どうせやるならゴールセッティングは高ければ高いほど良いとばかりに「初めから世界一」を目指すことにした。
そこで“バカ息子”はとんでもないことを思いついた。
「世界一のクラフトビールを作るためには、世界一を決める品評会の審査員になるのが早道だ」
選ばれる前に、選ばれる側になろうというのだ。なんと創業した年に国際大会の審査委員の資格をとった。もっとも資格を取ったからといってすぐに国際舞台にあがれるはずもない。3年間、国内大会の審査で経験を積んだ。
「1999年の全米大会に日本代表審査委員を二人だすことになった時、自分に行かせて欲しいと思いきり手を挙げました」
すると業界団体の幹部に「鈴木くん、君は英語は大丈夫なのか?」と突っ込まれた。
“バカ息子”は即答した。
「大丈夫です!」
本当は大丈夫ではなかった。だが人生は運と度胸だ
そこから国際大会の審査員の道が開け、世界一の称号を手にするクラフトビールメーカーへと伊勢角屋麦酒は駆け上がった。
胸のすく鈴木成宗さんとの対談後編を公開した。