ロックダウンもせず、マスク着用義務も課さず、社会機能の維持をはかってきたスウェーデン・モデルは高齢者の命を守らなかったと厳しい批判にさらされた。だが、孤立感がもたらしたメンタルのダメージが大きな社会問題になってきた今、スウェー デン・モデルがあらためて再評価されている。なぜならスウェーデンが最も重視してきたのは「若者や子どもたちのメンタルヘルス」だったからだ。
この話を知人の臨床心理士に伝えるとこんなメールが返ってきた。
「社会のあらゆるところに感染対策が与えたメンタルダメージが広がっている。たとえばNICU(新生児集中治療室)などに入院中の赤ちゃんたちは、病院で見る他者の顔は全てマスクをした顔。重い病気や超未熟児で長期間入院している赤ちゃんたちは、他者の鼻や口元を見たことがありません。スタッフは懸命に工夫をし、ご両親の顔の実物大の顔写真を持ってきてもらい、赤ちゃんのベッド柵に貼ったりしています。でも、これからの子ども達の精神的発達に影響がでない訳はないと思います」
とほうもなく気が重くなる。若者や子供へのメンタルを強く意識したスウェーデン・モデルの秀逸さが際立ってくる。