「二度は嘘をつけない」
福島第一原発の事故が起こる1年前まで福島第二原発の所長をつとめていた石崎芳行さんは、事故後は、福島復興本社の初代社長(東電副社長)となり、被災地と向き合ってきた。
第二原発の所長時代、彼は地元楢葉町の住民との交流に力をいれ、常々こう語ってきたそうだ。
「大地震がきたら原発に避難してきてください。ここは一番安全です」
石崎さん自身も原発の安全神話を信じきっていたのだ。“原発村”と呼ばれる技術集団に属さない事務系出身者が原発の所長になるのは異例だが、技術に詳しくないからこそ地元住民との交流に注力した。
だからこそ被災地に対する悔恨はとりわけ深い。
「福島第一原発の事故の原因は技術の問題ではなく、それを管理する人間の巨大なリスクに対する想像力の欠如だ」
東電を退社した今、石崎さんは楢葉町に住み、住民と同じ目線で復興の悲喜こもごもを共有している。
「二度と嘘をつかない」という思いで石崎さん独自の復興支援だ。
その一方、脱炭素化はまったなしの時代となり、エネルギーを化石燃料に依存する日本にとって原発は無視できない選択肢だ。どこかで私たちも本気で向き合わなければならない時期になっている。
だから私は聞いてみたかった。
石崎さんは原発に対して今どんな考えを抱いているのか?
「安定した電力供給を維持するには原発は必要です。しかし大手電力会社の原発の管理体制にはかなり格差がある。私は中部電力が原発の安全管理に一番優れていると考えている」
中部電力には「失敗に学ぶ回廊」があり、そこには過去に起こった大小の原発トラブルや事故の様子が、模型などで忠実に再現されている。担当者の証言もある。重大な原発事故は絶対に起こさないという緊張感を喚起する。原発の安全は「技術」ではなく「人」にかかっているということだ。
「余生はすべて福島の復興にかける」という石崎さんの語る原発論は胸に刺さるものがあった。
※タカラベnews&talk(BS11)
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