TAKARABE
JOURNAL本質を捉える視点

公然とバラマキ批判 財務次官の乱心ではなかった

冷静に考えれば、財務省の事務次官が勝手に『文藝春秋』でバラマキ合戦と化した与野党の政策論争を公然と批判するわけがない。
矢野次官は財務省内でも財政再建原理主義者として知られる過激派だ。だが官僚としてわきまえる範囲を軽々しく乗り越えてしまうほどバカではない。そんな男が事務次官まで登りつめるはずがない。
しかしこれには自民党が猛反発。高市成長会長は「失礼だ」とNHKの討論番組で怒りにあらわにした。また自民党内からは「たかが役人ふぜいが政治家を批判するなど許し難い。罷免しろ」という声が溢れ出している。
だが矢野次官の裏には麻生前財務大臣がいるのだ。だから後任の鈴木財務大臣も記者会見で矢野次官の寄稿は「手続き的にも、これまでの政府の基本方針にも反してはいない」と擁護した。
総裁選で金融所得課税を強く訴えてた岸田総理は、株式市場の下落をみて、あっという間に課税案を引っ込めてしまった。矢野次官の造反劇は岸田総理の軽さと比べたらじつに立派である。
もちろんコロナので痛んだ今、財政出動は必要だ。誰に、どう配るのか。中身を精査することなく、またどんぶり勘定のバラマキの規模競うことが、衆院選勝利の決め手だと信じ込んでいる政治家どもは国民はバカにしている。
矢野次官のバラマキ批判に怒り心頭してるひまがあるなら、メリハリのある精緻なバラマキにバージョンアップすべきだ。