TAKARABE
JOURNAL本質を捉える視点

生身の稲盛和夫と京セラフィロソフィー

戦後の京都には二人の対照的な起業家が生まれた。

京セラの稲盛和夫と堀場製作所の堀場雅雄だ。

いずれ劣らぬレジェンドたが、この二人は何から何まで対照的である。

稲盛さんは成功への原則を説き、それを実行する道のりまで丁寧に伝えた。それも生涯を通じてだ。京セラの経営から離れた後も、盛和塾で多くの中小企業経営者を導いた。

「経営とは人として正しい生き方を貫くことだ」

王道である。JAL再生の手法にも奇手は一切なかった。

片や堀場さんときたら、生粋の京都人で、超がつく洒落者。株式公開直前、幹事証券から「社是」くらい作れと言われ、本屋でそれっぽい書籍を買い漁ったたがピンとくるものがなく、一番しっくりくる言葉に辿り着いた。

「おもしろおかしく」

これには日頃おとなしい役員たちが猛反対した。

「そんなふざけた社是など聞いたことがない」 

何ヶ月もかけて役員たちをなんとか説きふせたが、いまではすっかり定着。海外のグループ会社では「Joy&Fun」と英訳されている。

「人としての正しさ」と「おもしろおかしく」。

あまりに違う。

レジェンド二人と私の関係もまた対照的である。たまたま私は堀場さんの知己を得て、親しくお付き合いして頂いたが、逆に稲盛さんとはとんと縁がなかった。

稲盛さんの経営哲学には隙がなく、多くの著書が国内外でベストセラーとなり、経営の神様と称さられるまでになった。

だが正直、私は素直に稲盛さんを受け入れられなかった。壁になったのは盛和塾だ。塾生たちの稲盛さんへの心酔ぶりは尋常ではなく、私の目には盛和塾は「稲盛教」とうっていた。稲盛さん自身は教祖のように崇め奉られることを望んでいたのだろうか。稲盛さん本人に取材もしたが、さながら仏様のような物言いに私は戸惑うばかりだった。昨年8月稲盛さんが鬼籍に入った後、谷本社長との対談がきまった。

果たして京セラ社内では創業者はどう捉えられているのか。谷本社長は稲盛さんの現役時代を知る数少ない証言者である。

谷本さんは役員、常務、専務、社長と昇格した節目のたびに稲盛さんから直接訓示を受けたそうだ。

「その時々の内容を覚えていますか?」と尋ねてみると、こんな言葉が返ってきた。

「毎度表現は違っても『人として正しく生きろ』ということに尽きていました」

いまや京セラフィロソフィーを体現する立場となった谷本さんの記憶に残る若き日の稲盛和夫はどんな印象だったのか?「怖いほど真剣な人」だったという。

詳しくは下記URLの動画で。

https://youtu.be/0gadrSm4Vgc